友人eriieさんが主催してる「水曜日の読書会」で、7月の課題本がこの物語。eriieさんを含めて4人で、2時間たっぷり語り合いました。

梨木香歩は、わたしが好きな作家のひとりです。この『沼地の〜』は、もう何度となく読み返していましたが、感じたことを人に話すのは初めてで、好きだからこそ緊張しました。ですが、信頼する場で話すことができたおかげで、ゆたかな時を過ごすことができました。

読書会からしばらく惚けながら考えるに、このもやもやとした雲をつかむような物語は、「帰ってくる」そこが全てであるように思います。生命のルーツはひとつであり、そもそもわたしたちはひとつの生命体であり、その現実と思想のもたらす多幸感は計り知れないけれど、やはり、わたしとあなたの間に膜はあります。膜がある現実を生きること、その孤独こそが、はじまりではないかと。

個と、全体と。『花々と星々と』からはじまり、相模原の事件、『沈黙』、『中動態の世界』を経て、ぐるぐると旅してきたわたしの躓きは、この物語に新しく出会いなおすことで、ひとつの虫眼鏡を得たようです。

【沼地のある森を抜けて/梨木香歩】