想定外の自然災害(が頻発しているように感じられる昨今の状況)とどのようにつきあってゆくのか。建築に関わる者としての姿勢を改めて考え直す時になっていると思うのですが、まだまだ思考の整理を達成できていません。

ですので、もう少し身近なところから言語化してゆこうと思います。今日は「防災用品としての山道具」についてです。

わたしは小さな頃から親に連れられて、アウトドアのアクティビティを楽しんできましたが、昨今の山道具の進化には目を見張るものがあります。その進化とは、主に機能性のアップ・軽量化・小型化・低価格化についてです。かつては、扱いにくく、大きく、重く、そして高価だった山の道具が、技術開発によって多くの人に身近なものとなったからこそ、現在の登山ブームが成り立っているといっても過言ではないでしょう。

そして、そんな恩恵がある状況だからこそ、「防災用品としての山道具」には一考の価値があると思います。それは、防災用品を普段から登山やアウトドアで使い慣れておくことで、何かあった時にも落ち着いて行動できるからです。


多くのアウトドアメーカーや登山用品店では、「登山×防災」で特集を組んでいます。

モンベル
https://www.montbell.jp/generalpage/disp.php?id=212
石井スポーツ
https://www.ici-sports.com/item/bousai/
好日山荘
https://www.kojitusanso.jp/pickup/1809emergency/

読み込んでゆくと、災害の種類や状況によって、必要なもの・役に立つものは変わってくることがわかります。そしてヘッドライトひとつとっても、多くの種類があることも…。そこで頭の中が混乱してきたら、実際に店舗に足を運んで、店員さんに相談をするのをオススメします。

山道具購入の相談をすると、多くの店員さんはまず「どんな山・どんな季節に登るつもりですか?」と確認してくれます。つまり、使用する状況によって適した道具が異なってくるということで、これは防災用品と一緒。店員さんには、防災用品として使いたい旨をしっかりと伝え、山道具としての使用も考えているのであれば、具体的な山の名前を挙げられるとよいですね。


ここからは、わたしの個人的な考えとして、防災用品として備えている山道具のお話をしたいと思います。まずはこのあたりから備えてみれば?使ってみれば?というもので、すこしだけ耳を傾けてもらえればうれしいです。

一次避難時
①トレッキングシューズ
②レインウェア
③ヘッドランプ
④ホイッスル

二次避難時
⑤水袋
⑥コンロ
⑦アルファ米・フリーズドライ食品
⑧自立式テント・テントマット
⑨セームタオル

一次避難時に:災害発生直後に自分の身の安全を確保するための備え

①トレッキングシューズ
足元が悪いところでも、靴底からつま先、足首までを守ってくれます。また、防水性のあるタイプのものを選んでおけば、水害の際にも役立ちます。(水害の際、長靴での避難は危険です。)山やアウトドアのシーンだけでなく、日常の雨の時にももちろん履けますので、こちらはどんどん取り入れてもらいたいアイテムです。

②レインウェア
傘がさせない状況でも、体を雨から守ることができます。それなら100円ショップで販売されているようなレインコートでもいいじゃないかと思いがちですが、登山用のレインウェアには防水性だけでなく透湿性があり、これが重要なポイント。外側からの水分をガードするだけでなく、身体側からの発汗による湿気を逃してくれるのです。この機能によって、身体の冷えを避けることができます。

③ヘッドランプ
懐中電灯があればいいと思うかもしれませんが、やはり両手が空くヘッドランプはいざというときに役に立ちます。周囲に異常を知らせる赤い光や点滅機能など、切り替えて使い分けができるタイプがオススメです。

④ホイッスル
はぐれてしまった時や閉じ込められてしまった時などに、まわりに気づいてもらうためにホイッスルを使います。少しでも早く気付いてもらうにはホイッスルが役立ちます。叫ぶより音が通りますし、体力を消耗しません。最近はバックパックのチェストストラップ金具にホイッスル機能がついているものもありますね。わたしは今まで、山でホイッスルを鳴らす状況にはなったことはありませんが、いつも首からぶら下げています。

二次避難時に:災害発生後、ライフラインが復旧するまでの備え

⑤水袋
水筒ではなく、プラスチック製のおりたためる水袋です。様々なサイズがありますが、山道具と防災用品を兼ねるのであれば、2.5リットル程度のものが適しているかと思います。災害後の水の確保はとても重要ですので、各世帯で長期保存水の備蓄をしてもらいたいですが、ここでは水の運搬・保管に焦点を合わせました。

⑥コンロ・鍋
家庭用カセットコンロでもよいのですが、やはり持ち運びがしやすい山用のコンロは避難時にも適しています。ですが、悩みどころは山用コンロは専用のガス(OD缶)しか使えないところ。避難生活が長期化した場合、一般的なタイプのガス(CB缶)に対応していた方が…と悩んでいたところ、こんなコンロもあるそうです。そしてコンロに合わせて鍋も一緒に用意したいですね。山用の鍋は中にガスがしまえる設計がせれているので、かさばることもありません。

⑦アルファ米・フリーズドライ食品
さまざまな非常食の中でも、アルファ米・フリーズドライ食品は利便性がよく日持ちもします。またレトルト食品と比べて軽いので、いざという時に持ち運びがしやすいのもよいですね。これはモンベルのサイトからの転載になりますが、農林水産省がまとめている『家庭用食料品備蓄ガイド』では、東日本大震災の事例から「(満足に食料を調達できるようになるまで)最低で3日分、(ライフラインが復旧するまでの)できれば1週間分程度」の期間を目安に非常食を備蓄することを推奨しているそうです。この数字を目標に備えておきたいです。

⑧自立式テント・テントマット
そこまでは…と思うかもしれませんが、有事の際にテント生活をする訳ではなく、避難所の中でテントが就寝や着替えの際に役に立つからです。そのため、土ではなく床の上にテントを張ることを想定して自立式のものを選んでください。また、避難所で不足するもののひとつに毛布があります。特に冬場の冷えを軽減するためにも、テントマットも一緒に持っておくと安心です。

⑨セームタオル
アウトドアというより、よくプールやジムで見かけるセームタオル。軽く絞ればすぐに吸水力が戻るので、普通のタオルのような洗濯乾燥の手間が省けます。


ここまで、ざっと駆け足にまとめてみました。

予測できない自然災害に対して、個人としてどこまで備えればよいのか。上を見ればキリがないのが正直なところではあります。ですが、「防災用品としての山道具」として橋をかければ、自分が備えるべき最低限のラインが捉えやすいのではないのでしょうか。

「防災用品を揃えたから、山に登ってみようかな…」なんていうのも、新しい山との出会い方なのかもしれません。