先日、瀬戸内海に浮かぶ離島・真鍋島を初めて訪れました。

目的は、自宅とは別に拠点を持って地域により深く関わってゆきたいという知人の「拠点とする空き家選び」に同行すること。ですが、すでに真鍋島と親密な関係を築き始めている知人に、島をゆっくり案内してもらい「合間に空き家を見る」という、贅沢な滞在となりました。

真鍋島といえば人口より猫の生息数が多いという「猫の島」として知られているので、Instagramで真鍋島を検索すると、猫づくしの写真がヒットするのですが、その背景となる街並みは古き漁村の営みを今に残していて、その雰囲気も美しい島です。

多くの離島と同じように真鍋島も過疎の問題を抱えていて、その多くの家が空き家状態です。ですが、家々の密度が高く、閑散とした様子を感じさせません。それは、真鍋島の地形により人が住める土地が限られていたこと、そして2つある集落が1kmほどしか離れていないことが理由に挙げられそうです。この地の利から、下水道も整備されているそう。

ゆっくりと島歩きをしていて、この「徒歩圏内に生活がおさまる」ことが、真鍋島の魅力のひとつではないかと思うようになりました。地方での足といえば車であり、その力は偉大ですが、モータリゼーションの進行とともに失われた「偶然、人と人が顔を合わせて始まる」コミュニケーションも多くあるはずです。また、都市計画の視点からも多くの地方都市が「歩けるまちづくり」を構想として挙げている中、「すでに歩けている」という点では一歩先をゆくのではないかと思います。

「歩けるまち」には、路肩にベンチが多いような気がします。歩き続けるのは疲れますから、自然発生的に誰かがそのたまりをつくってしまう。そしてそこに人がたまり、会話が生まれ、営みの風景となり、そして文化が生まれるのかもしれません。

歩いているとこんなおもてなしも…

ところで、さきほど「空き家状態」と書いたのは、5月上旬の走り神輿というお祭りの時期には、多くの家に明かりが灯るからです。こういった「関係人口」に地域づくりの担い手となってもらい、真鍋島と幸福な関係を築いてもらうか。この視点にも、真鍋島の未来があるように感じました。

昭和24年に建てられた現役の木造校舎の真鍋中学校